四章 執事ジャック「一」

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四章 執事ジャック「一」

「そうゆうことで、今日も、一日、皆さん、がんばりましょう。では、コック長。ジャックが集めてくれた卵で、皆の朝食の用意をお願いします」 さあさあ、行った行ったと、セバスは、使用人達を蹴散らした。 「おや、へたれこんでいる、メイドのルーシー、どうしました」 あの、それは、その、と、ルーシーは、恥じらいを見せる。 「申し訳ありませんが、私、これから、ジャックの手当てに出かけなければなりませんので、あなたと、イチャイチャ、大丈夫でしか?等、戯けたことは出来ないのです」 同僚、そして、レディに向かって、あまりにもの、セバスの塩対応に、さすがの、ジャックも、呆然とした。 と、一瞬の間の後、あっ、そっと、ルーシーは、いい放つと、さっと、立ち上がり、すたすたと、自分の持ち場へ歩いて行った。 「ちょっ、あの姉ちゃん、腰抜かしてたんじゃなかったのかよ!」 「まあ、いくらかは、あったのでしょうが、逐一、相手にしていたら、きりがありません。屋敷に、メイドは、いったい、何人いると思っているのですか?」 持論を述べるセバスに、ジャックは、開いた口が閉じない状態だった。噂には、聞いていたが、さすが、敏腕腹黒執事……。人使いが、並みじゃない、いや、お互い、手慣れていたのだから、何も、セバスが、ではなく、この、屋敷が、ではないのか?! 「はあー、厄介な所に来ちまったなぁ」 「でしょ?こんな、厄介な集まりに、お嬢様を放り込んだら、どうなるか、すれすれのあばずれ寸前になってしまいますよ。まあ、社交界と、いうところでは、多少、嫌われ者の方が、威厳を保てる、というところは、ありますけどね。しかし、ジャック、物には、限度というものがあるでしょう?君に、そこら辺り、押さえてもらいたいと、願っているのです」 エドワードが、真顔で言った。 「……そうなのか、セバス」 ジャックは、エドワードの、一歩間違えれば、説教になりえそうな、願いとやらを聞き、セバスに確認した。 そもそも、いきなり、執事にと、それも、お嬢様付きという限定で、呼ばれたというか、拘束されてしまったのは、何故か。 ジャックも、知りたかったのだが、要するに、社交界での身辺警護、の、ようなものかと、エドワードの言葉から、ジャックは、読み取った。 一癖も二癖もある、社交界の人脈の中で、生き残るのは、上位の家柄を盾にするか、図太くなるか、の、どちらかで、言うように、嫌われるぐらいの方が、逆に、面倒には、巻き込まれにくい事は、確かな話。 だから、人脈には、人脈をと、表も、裏も、繋がりを知り尽くしているジャックに白羽の矢が立った、と、いうわけなのか。 「は?そうなのですか、なるほど、あばずれにならにいように、無法者を側に置くと、エドワードさん、なかなか、思いきった策ですねぇ」 「はあーーー?!」 「おや?ジャック、どうしました?」 「じゃあ、俺は、てきとーに、連れてこられたってことか?!」 「適当では、ないんだけど、セビィが言い出しっぺなので、私は、詳しくは……」 と、なぜか、エドワードはおろおろし、その瞳は、泳いでいた。 「お前、さっきまで、ご託並べてただろう!エドワード!年取っても、その、瞬間にして、逃げ出す、悪どいすばしっこさは、変わんねーな!」  あらら、なんでしょう、と、エドワードは、ぼやきつつ、セバスを見る。 「うーん、なんでしょう、本当に。あー!エドワードさん、医者、いえ、治療に、ジャックを連れて行かれるのですか?ならば、早速、準備しますが」 「そーでした。セバス。でも、私達二人で、出かけて来るから、辻馬車でも拾って、適当に動くから」 「……そうですか?で、どちらまで?」 「お嬢様の所まで」 「エドワード!それは!」 ジャックが、異常に取り乱した。
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