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プロローグ
「え、辞める?」
「うん、そんな噂あるよ。きちんとDM(糖尿病)専門内科のあるところに移るって話。」
薄紅色に彩られた絵梨花の唇をただじっと見た。この口から、今聞いたことは発せられたのだろうか。本当に?
「そんな…聞いてないよ、何にも。」
絞り出した。肩に絵梨花の手を感じる。その温かさが遠い。
イブの鍵のことですら、まだ心の中できちんと消化出来ていないのに。いなくなる、大地が?だって私たちこれまでずっと一緒だった。驚き過ぎて頭が働かない。医局ではちっともそんな話、出ていなかった。確かに大地が独立戦争に苦戦しているのは、もうずっと知っていた。でもだからと言って、病院を変わる可能性については何も考えていなかった。
大地、行っちゃうの?
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