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この体を知られるのが怖くて、人を好きになることさえ出来なかった。
春の訪れを知らせてくれる桜は校庭で美しく咲いている。
窓から入る風が白い髪の毛を撫でながらさらりと吹いていく
灰色の俺の瞳に薄桃色が美しく彩りを写した。
…………恋も出来なくて………
まだ肌寒い季節。
俺は桜に見とれながらそろそろ帰りの支度をしなくてはと考えていた。
人のいなくなった教室で一人、いつまでも座っているわけにもいかない。
立ち上がった時、窓の外、桜の木の下で人が二人いることに気が付いた。
興味などもなかったが、そのうちの一人がとても有名な学生であったため、つい見ていた。
なにやら二人は言い争っているように見える。
恐らく言い争っているのだろう…片方は女だがそこそこ綺麗な女だ。自分のルックスにだいぶ自信のありそうな顔をしている。
そして、もう片方もこれまた格好いいと一言で言える。というよりも、この男こそ学校で有名な男だ。
まぁ、俗にいう美男美女というやつだろう。しかし、男の方は顔はいいが女癖が悪く、常に女をストックし、浮気三昧だという。
その噂はどうやら嘘ではないようだ。
俺からするとまったく関係無い話だが、正直呆れる。
一人の人間も愛せず恋愛ばかりするなんて、としか思わない。
別に一人を愛することが凄いとは言わないが、節操なしは見ていて不快に感じる、
もっとも自分自身恋愛などしたくない、正確には出来ないので関係無いことには口出しもしないが、あれが同じ男なのかと思うと情けないと感じる。
世の中の女性の感覚があの男のせいでかわったら、是非警察に捕まって欲しいところだ。
なんて考えていると女が大きく手をふりあげて男をひっぱたいた。
(うわぁ、痛そ)
それから女はどこかへ行ってしまった。残ったのは最低男一人だけだった
(にしても、あんな男の何処に引かれたんだか…恋って不思議なものだな、ほんと……ま、いいや、変なの見たしさっさと家に帰って寝てしまお)
よっこいせ、と声に出して立ち上がった時。
その噂ばかりの男と目があった………ようなきがしたが、それだけだった。
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