彼女を幸せにした方法

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彼女を幸せにした方法

 桜木町駅の改札口は数年前に北口ができたおかげで多少の人混みは緩和されたと言っても雑踏が蠢いていることには変わりなかった。  電車が来るたびに改札から吐き出されるように出てくる夥しい数の乗客の中から久しぶりに会う彼女の姿を毎回探してしまうが予定の時間までまだあるため、そこに彼女がいるはずはなかった。  新卒時の入社祝いに親が買ってくれた高島望(たかしまのぞむ)のイニシャルが刻印された腕時計をチラチラと何度も繰り返し確認しているから僕自身そんなことは百も承知だった。 「お待たせぇ」  そんな他人と自分との勝手なやり取りを十数回済ませたころ、背後から久しぶりに聞く声がしたのだった。  さすがにそろそろ彼女が現れてもいいころだろうと思って改札から出てくる乗客の中を凝視していたのに、まさか後ろから声を掛けられるとは思ってもおらず、思った以上に勢いよく振り返ってしまった。  後ろにはキャリーバッグを引く湊未来(みなとみらい)がずっと変わらない僕が大好きな愛嬌のある笑顔で立っていたのだった。  彼女は仕事の都合で数年前に大阪へと転勤してしまって、今回会うのも久しぶりであった。 「おかえり――」  再会に逸る気持ちを抑えながら極力ゆっくりとした動作で両腕を広げ彼女に近づき包み込むように抱き締めた。  抱き締められた彼女は額を僕の胸に当てて、ワンテンポ置いてから僕の身体に腕を回して応えてくれた。 「ん、ただいま」  身体を少しそらすようにして、自分と彼女の間に少し距離の距離を作って僕は彼女のお腹をチラリと見た。 「長旅疲れたでしょ、とりあえずご飯食べに行こう。レストラン予約しておいたよ」 「ありがとう、もうお腹ペコペコ」  そう言って彼女はお腹をさする。  僕は彼女のキャリーバッグを握り、踵を返して僕はゆっくりと進み始めた。
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