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宇宙生物との友好
海辺で三つの麦わら帽子が並んで、果てしなく広がる壮大な海を眺めていた。
真ん中に座る母ちゃんの手が、両脇に座る幼い百合ちゃんと僕の頭を優しく撫でた。呪文の様に撫でた。
深青の波間に無数の光が反射して、キラキラとした波映が目の前一面に揺れていた。
「百合ちゃん、啓太、この広い海には沢山のお魚さんや貝さんやカニさんと一緒に、遠いお星さんから遣って来たイッパイの、変わった生物さん達も一緒に暮らしているのよ」
「遠いお星さんから、変わった生物さん達が来たの?」
「そうだよ、お空のお星さんから、イッパイの生物さん達が遣ってきて、地球の生物さん達と一緒に暮らしているんだよ」
「この海にもイッパイいるの」
「居るわよ、目の前の砂のずっと下にも居るわよ」
「砂のずっと下にもいるの?」
「いるわよ、砂の中にも海にも山にも、宇宙人さん達が宇宙生物さん達が、 イッパイ暮らしているのよ、この地球はね、人間さんだけの物じゃないのよ」
神秘的な海が静かに広がっていた。
小さな白い水泡が光る黒い砂地に、母ちゃんが木の枝で大きな丸い円を力強く描いた。
「この下に、イッパイのカニさんやエビさんや貝さんが居ます、見つけて下さいね。モット下の方に、宇宙生物サン達がいます。探して見つけても苛めないでね、仲良くしようね」
何時もは暴言を吐く母ちゃんが、その時は、優しい声が覇っきりと響いていた。
「小母さん、宇宙生物さん、可愛いの ? 恐いの ? 」
「可愛いかも知れないね、恐いかもしれないね」
「小母さん、私、宇宙生物さんと遭いたい、宇宙人さんと仲良くします !」
幼い百合ちゃんの声とは思えない、しっかりとした美しい女性の声だった、様な気がしている。
母ちゃんの顔が太陽光の下で輝いた。
「百合ちゃん、啓太、一生懸命掘るんだよ。イッパイのカニさんや貝さんが捕れるからね。啓太と百合ちゃんと力を合わせて一生懸命掘るんだよ。そしたらきっと、宇宙生物サンと遭えるからね。さあ、がんばって!」
それぞれが青い赤いプラスチックの小さなバケツと小さなスコップを手に、お揃いの麦わら帽子の紐を顔に括り付けた僕の顔と百合ちゃんの顔が、嬉しそうに見上げた。
「うん ! 」
「はあーい ! 」
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