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ふと改めてリノの送ってきた文章を読んで、なんとも言えないが違和感のような不思議な感覚を覚える。
「あ……」
19時終わりなら都合がいい?
そう云えば、リノが普段何をしているか知らない。働いてはいるのだろうけれど、昨夜の感じと、これから梗を送り迎えすると言う話からすると、夜の街で働いている訳ではないのかも知れない。
「昼間働くリノさん?……だめだ、全く想像つかない。美容師さんとか、アパレル系なのかな」
リノの見た目から勝手に想像してみるが、そのうちにそんなことよりも、どうやって500万もの大金を返すべきか頭を抱える。
「要らないお金で善行したみたいなこと言ってだけど、500万円が要らないお金な訳ないもんね」
ふと、影を落としたような表情をしたリノを思い出す。
【雨、嫌いなんですか】
何気なく文字を打ち込んでそのまま送信ボタンを押す。
(なにしてんだろ……)
ベッドから出てパーカーを羽織ると、そのままスマホを手にキッチンでコーヒーを淹れてリビングの電気をつける。
「なんか目が冴えちゃった」
スマホをテーブルに置くとテレビをつけてニュースを流しながら、冷蔵庫から取り出したエクレアと、ミルクをたっぷり入れた甘いカフェオレをゆっくり飲む。
ピコンピコンとまた何度も通知が鳴って、リノから返事が来た。
【どうしたの?俺に興味あるのかな】
【そうだね。雨はあんまり好きじゃない】
【麗ちゃんが一緒に寝てくれたらなー】
リノらしいと云えばリノらしいが、なんだか上手くはぐらかされたような気がする。
別にリノを深く知りたい訳じゃないけれど、これから短くない付き合いの中で、偽名しか知らない500万の人としか認識できないのは違うと思った。
【リノさんってあだ名ですか?本名は?】
少しだけ踏み込んで質問してみる。思ったよりも甘くなってしまったカフェオレを飲みながら、リノからの返事を待つ。
【あれ?あれあれ?】
【俺のことそんなに知りたいの】
すぐに来た返事に、やはり相手はリノだとスッと気持ちが冷めていく。
「この人、こう云うところがなぁ」
しかし、無利子でポンと500万を肩代わりしてくれた恩人を無碍には出来ない。
【変わった名前だと思ったからです。他意はありませんよ】
大きく息を吐きながらチャラチャラしたリノを思い浮かべてメッセージを打つ。
そんなくだらないやり取りは、結局出勤前までダラダラと続いたのだった。
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