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 寝ている途中から急な冷え込みは感じていたが、窓に叩きつけるように降る雨粒の音で目が覚める。 「……んん、雨ぇ?今何時だろ」  枕元のスマホを手に取ると、5:23の文字がロック画面に表示される。 「うぅー。まだこんな早い時間か……ん?」  梗が勤めるエクリプスレコードは基本10時出社でフレックスも導入されている。  自宅は会社の近くだし、普段から早起きとは無縁の生活を送っているため、こんな明け方に目を覚ますことはない。  けれど画面にメッセージアプリの通知が来ている。着信は3分ほど前。送信者はリノだ。 「……げ」  これからパピヨンの出勤がある時は必ず送迎すると言って聞かないリノは、梗から半ば無理矢理にスマホを奪ってメッセージアプリの連絡先を交換させた。  ここで一つホッとしたのは、アプリの表示名を水馬紫花子(みずまあいこ)にしてあることだ。変に本名や素性がバレるのがなんとなく嫌だったので——闇金にはバレているが、そこは少し安心できた。  ちなみにこれは母の旧姓で、交換した大抵の人が驚くのだが、ほぼ身内としか連絡先を交換しないので問題はない。 【ぐっすり寝てると良いんだけど】 【凄い雨で起こされたから夜中にごめんね】 【夜は何時にどこに迎えに行こうか。ヘアサロン?自宅で良いの?】  メッセージは3つ。こうやって文面を分けて送ってくることに少しイラッとしながらも、すぐに返信を送る。内容はこうだ。 【着信で起こされました。仕事は19時終わりの予定ですが、自宅で支度をしますので20時ごろいらしてください。店は20時半入りです】  嫌味を込めて真夜中に起こされた抗議をすると、返事はすぐに返ってきた。  ピコンピコンと何度も通知が鳴り、今度はメッセージが4つ。 【即レスくれた】 【ごめーん。起こしちゃったね】 【仕事は19時終わりか。ならこちらも都合がいいよ】 【じゃあ自宅前に20時ごろ行くね】  気遣うような内容ではあるが、またしても文章が分けられていることに非合理的な印象を受けてしまう。 「はぁあ。まとめて一通にしてよ……」
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