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30
「それで、駉介のことはどうするのか決めたの?」
突如真剣な顔で紅蘭が切り出す。
「いや、それはまだ。駉介にぃはアレでも考えなしじゃないですし、自分から連絡してくると信じてます」
「本当に……あのバカは」
紅蘭は頭を抱えると、私に相談すれば良いものをと大きく溜め息を吐き出す。
「紅蘭さんのところにも、駉介にぃからは連絡ないんですか」
「貴方が来るまでなにも知らなかったって言ったでしょ。あの後からずっと連絡してはいるんだけど、一切応答はないわ」
「そう、ですか……」
駉介から困ったことが有れば、自分か自分の世話になった人を頼るようにいつも言い聞かされていた。しかし駉介本人がやらかしたので、今回の場合は駉介が名前を出した紅蘭にしか頼ることができなかった。
彼女は駉介の大学からの先輩であり元同僚。つまり外交官だった経歴の持ち主である。
「ねえ、麗ちゃん。貴方は真面目で努力家だから、この一年で大きな額のお金を春日井さんのところに返してきたけど、向こうからしたらいい金ヅルの縁がプツリと切れた状態なの。分かるわよね」
「それはリノさんも言ってましたけど、完済したからいいんじゃないんですか」
「違うわ。また悪知恵を絞って貴方に借金を被せないとも限らないの。ああいう人たちは、おいそれと簡単に距離を取ってくれるものじゃないのよ」
「でも……そんなのどうやっても、私一人じゃ防げません」
「私の知り合いの弁護士さん紹介する。リーくんのこともボディガードだと思って、それなりに頼ってあげて。彼なら力になってくれるから」
今日は何かアクシデントのはずだからと、紅蘭はリノの肩を持ち、帰りは迎えに来ると思うと一人で行動しないように念を押される。
「分かりました」
渋々ながらも返事をすると、じゃあ切り替えてフロアに出ましょうかと二人して席を立つ。
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