狩るモノ

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カリカリカリカリ……カリカリカリカリカリカリ……カリカリカリ……カリカリ……カリ……  大きく開いた口から黒い蟲がこぼれ落ちると,喉の奥から大量のゴキブリと見たこともない大きさの蝿が溢れ出し,眼球を内側から押し出したかと思うと,全身の皮膚を食い破って炎から逃れようとして崩れ落ちた。 「真嘉内! 動けるな!? 逃げるぞ!」  店内は炎に包まれ,真っ黒い煙が天井を覆い尽くした。煙のなかを大型の蝿が飛び回り,足元は大量のゴキブリで埋め尽くされたが,炎で焼かれる蟲はいなかった。 「くっ……真嘉内の腕は……? 指はどこだ……?」  鋭利な切口の腕を見て,落とされた腕があればくっつけることは可能だと思い,煙を吸わないように身を低くして真嘉内の腕がないか落とされた辺りを見回した。  少し離れた場所に真っ黒い塊があったが,蟲が肉を食い散らかし,骨が露出していた。 「先輩! もう,いいです! 早く逃げましょう!」  真嘉内の言葉に自分が思った以上に焦っているのがわかり,深呼吸をして出口を目指した。  テーブルの脇で黒い煙が渦を巻いたかと思うと,突然山本の顔を蹴り上げようとする脚が目の前を通過した。  入口付近にいた店員が煙のなかから現れると,山本を蹴り損ねた勢いのまま真喜内に体当たりをしたが,目の前で空振りするところを見ていた真喜内は,すかさず横に飛び,店員の足を掛けて転ばした。 「構うな! 外に出るぞ!」  倒れた店員の身体から蟲が溢れ出すと,振り向く顔も蟲に喰い破られて原形を留めていなかった。
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