狩るモノ

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 煙とともに店の外に飛び出すと,僅かだがすでに野次馬ができ始めていて,建物のあちこちから真っ黒い煙が立ち昇っていた。 「誰か救急車を呼んで下さい! 怪我人がいます!」  店の前にある駐車場に真嘉内を寝かせると,肩の下あたりをベルトできつく締め,これ以上出血しないよう止血処置を行った。 「先輩……これ……労災,おりますよね……?」  苦しそうな笑顔でそう言うと,真嘉内は意識を失った。 カリカリ……カリカリカリカリ……カリカリ……カリカリカリカリカリカリカリカリ…………  山本の頭の中で耳鳴りが響き渡り,抑えようのない怒りが湧き出した。 「くそっ! なんなんだよ,なんで耳鳴りが激しくなってんだよ!」  何度も頭を叩いてみたが耳鳴りは治らず,カリカリと頭の中で不快に響き渡った。 カリカリ……カリカリカリカリ……カリカリ……タスケ……カリカリカリカリカリ…………  耳鳴りのなかに微かに違和感を覚え,目の前で真っ白な顔をして横たわる真喜内をじっと見た。なにかが記憶の片隅でチラチラとその姿を現そうとしているかのような感覚が胸を締め付けた。 「くそ……なんなんだ……二十年間………なにもなかったのに……なんなんだ……なにを忘れてるんだ,俺は……」  横たわる真喜内の目が大きく開き,山本を睨みつけた。乾いて割れた唇が微かに開き,血が滲んだ。真っ黒く濁った瞳が揺れた瞬間,脂のような液体がゆっくりと垂れて地面に染みをつくった。 『ニ……ゲテ……ニゲ……テ……ツカマ……ル……ヤ……ツラ……ガ……ヤツラ……ガ……クル……ニゲテ……』  店の奥から小さな爆発音がし,駐車場にいた野次馬が一斉に身を低くした。山本が我にかえると,目の前の真喜内は相変わらず真っ白な顔で意識を失ったままだった。
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