覚醒するモノ

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 意識のない山本は織田と看護師に徹底的に組織や血液を採取され,身体の一部を切除されたり十分な量のサンプルを採られた。  その内容は爪や髪の毛から始まり,内臓の各部位まで細かく採集され,辛うじて脳の一部を採集されなかったのは救急を担当する外科医である織田にとっても脳は未知の領域で触れること自体を躊躇したからだった。  そのことを山本自身は何も知らず,当時は交通事故で入院し,あちこちを怪我したのだと思い込んでいた。  いまになって記憶にないことが第三者の目で見ているようにすべてが鮮明に見え,この二人が自分の身体を切り刻んでいる様子を見て吐き気を覚えた。 『この細胞を増殖させ,マウスで実験するところからだな。これがどんな結果になるかは想像もつかないが,いくつかの仮定を立てて研究を始めよう』  織田が細かく細分化された細胞を培養シートの上に丁寧に並べ,専用の保管庫で温度や湿度を管理しながら少しずつ培養を始めた。  山本は過去の自分自身の記憶を見ながら初めて知ることの多さに戸惑ったが,同時に自分が普通の人間ではない生物だと思い知らされ複雑な心境になった。 『嘘だろ? マジか……? 俺は……人殺しなのか……? 人を殺して喰ってるのか……?』  そして自分の身体が突然ミイラ化する様子を見ていたが,それはまるで木の枝のように細くカラカラになり,簡単に折れてしまいそうな姿なのに異常な凶暴性をもち,犬や猫,人間の身体を食い散らかしている姿は妖怪や化物の類で,とてもそれが人間だとは思えなかった。
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