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織田の凶行に怒りを感じ,何の罪もない人間に人体実験を行っている証拠を掴んで看護師の殺害以外にも罪を暴いて逮捕する必要を感じていた。
自ら人を殺し,人肉を喰っていることも公にしようと心に誓い,織田の犯罪行為を明るみに出したら自殺することを決意した。
手脚を動かすと,最初にベルトに繋がれていた部分に僅かに余裕ができていたので,ゆっくりと手を引き抜いてみた。
革製のベルトに細く皺々になった手首の皮が引っ掛かり,ゆっくり手を引き抜くと皮と肉を削ぎ落とすようにしながらベルトから手が抜けた。
痛みはなく,血も流れず,ただ肉と皮が削ぎ落とされただけで,山本がなくなった部分を不思議そうに見ていると,モリモリと肉が盛り上がり,皮が伸びて傷口を覆っていった。
「なんだよ……この身体……マジで化物じゃねえか……」
織田は山本の様子に気づかず,床に転がる看護師を邪魔にならないように端に移動させていた。
その様子を見て,一気に手脚をベルトから引き抜くと腹部を固定しているベルトを外し,無くなった部分が再生しているのを確認してから静かに床に足をついた。
織田が山本に気づいたときは,山本の腕が織田の首に絡み付くように顎の下から締め上げ,織田は抵抗する間もなく白目をむいて意識を失った。
「さて……俺はいま何をするのが正解なんだ? こんな身体になって,いまさら人前に出たら織田みたいな狂った連中に人体実話の餌食にされるんじゃないだろうか……」
横たわる看護師の身体を見た瞬間,全身の水分が抜けたような脱力感と異常な空腹感が同時に押し寄せてきた。
戸惑いながらも,山本は欲望に抵抗できずに看護師の腹を鋭く尖った爪で開き,黄色い脂肪にまみれた内臓を引き摺り出してくちゃくちゃと音を立てて喰い始めた。
新鮮な臓器と血が全身に拡まると,恍惚な表情を浮かべ,看護師の内臓が自分の胃に収まる度に幸福感が全身を包み込んだ。
「くっそヤベェな,なんだよ,この幸福感」
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