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満たされると病室に横たわる織田には目もくれず,掬躬津彌生を求めて病院内を走り回った。
廊下を走る血だらけの身体は猟奇的で,山本を目撃した看護師は悲鳴をあげて座り込んだ。
「くそっ! どこにいる? 掬躬津彌生。ぶっちゃけ意味がわからないが,織田はあの子を十五年も掛けて探していた。やっと見つけたと言っていたんだ,きっと重要な何かに違いない。絶対に連れて逃げるべきだ」
山本は病室を開けては室内を確認し,掬躬津彌生がいなければすぐに隣の部屋に移動した。
「くそっ。個室か!? このフロアには個室があるのか!? どこだ!? 別のフロアか!?」
廊下の突き当たりにある部屋を開けた瞬間,目の前に真嘉内がベッドにベルトで拘束されて寝かされているのを見つけた。
失ったはずの左腕には得体の知れない巨大な肉塊が肩までまとわりつき,脈を打つように微かに動いていた。
「なんだよ……これ……? 真嘉内の腕を人体実験で,もしかして俺の遺伝子とかってやつで再生……してるのか? ふざけんなよ,こんなのどう考えても犯罪だろ」
山本の警察官としての正義感と人を食べる快楽が心の中で交差し,目の前で異形の姿になりつつある真嘉内を見て人間にはない美しさを感じていた。
「くそっ……なんだ,この感情は……真嘉内のこの姿に美しさを感じるなんて……俺は身体改造マニアじゃねぇんだぞ……」
真嘉内が山本の気配を感じ,部屋に山本がいることを確信したかのようにゆっくりと目を開いた。
「先輩……」
「真嘉内,お前,生きてんだな……」
「ええ……よくわからないし,自分の左腕,めっちゃエグいことになってるんですけど……なんすか,これ? めっちゃ熱いんですけど」
肉塊が微かに動いた瞬間,山本の背中に冷たいものを感じた。
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