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「真嘉内,お前の左腕,もう一回切断させてもらうぞ。こんな意味不明なもんくっ付けてたら,何が起こるかわかったもんじゃねぇ。歯を食いしばって,こっちを見るな」
「え……? 切断するって,なにをっすか?」
「これだよ」
真嘉内が自分の左腕を見ている前て山本が鋭く伸びた汚い爪で左肩からすぐ下を乱暴に切り落とした。
その瞬間,大量の血が噴き出し,真嘉内の絶叫が病院内に響き渡った。悲鳴にも似た絶叫は窓ガラスを揺らし,大きく開いた口からは呪いの言葉のような呻き声が溢れ出した。
突然左腕を切り落とされた真嘉内の身体が激しく脈打ち,全身の筋肉が異常に膨張し傷口を一瞬で筋肉で覆い尽くすと出血が収まった。
膨張を続ける巨大な筋肉が拘束しているベルトを引き千切り,真嘉内が飛び起きた。
呼吸が荒く血走った目が高速で振動し,剥き出しになった歯を剥いて大量の涎にベッドに濡らすその形相はもはや人のものではなかった。
「イデデ・デデェェェ・センパイィィ・シャレニ・ナラナイッス・ヨォォオ」
乱暴に左腕を切り落とされ,全身の血管が浮き出し,足の先から頭のてっぺんまで太い血管が筋肉の上で激しく脈打ち動いた。口からは歯を食いしばるギリギリといった音が漏れ,全身から大量の汗が噴き出した。
「おいおいおい。俺だってその拘束具は筋肉膨らませたくらいじゃ千切れねぇんだぞ。お前,それドーピングなんてもんじゃねぇだろ」
「ムチャクチャ・シナイィィィ・デ・クダサイ・ヨォォオ」
山本が一歩下がって距離をとると,廊下を走って病室に近づいてくる足音を確認した。
「で,真嘉内,会話ができてるってことはお前,ちゃんと意識はあるんだな?」
「アリ・マスゥゥゥ・ヨォォォ。ウデ・イタミモ・カンジテ・マァァスゥゥゥ」
真嘉内は筋肉を痙攣させながら,歯を食いしばって口を開かずに言葉を発したが,口元から垂れる涎と全身から噴き出す汗が足下に水溜まりを作った。
そんな真嘉内を観ていると自分も含めてもはや人間ではないのだと確信した。
部屋の温度が急激に上がっていくのを感じながら,病院全体が異様な空気に包まれているのを肌で感じていると,遠くから病室に向かって早足で近づく複数の足音が大きくなっているのを感じた。
「お前,動けるよな。ここから逃げるぞ。掬躬津彌生は一旦諦める。織田先生は生かしてあるから,またくればいい。俺たちにはわからない人体実験なんてやってるなら,あいつは法の下で裁かれるべきだ。真嘉内,いいか,走るぞ」
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