眷属なるモノ

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 深い茂みを掻き分けて前に進むと,遠くに点々と民家の灯りが見え始め,しばらく進むと山本も真嘉内もよく知る集落の入口が現れた。  集落といっても,三百人は住むこの一帯は近くに駅やコンビニがないだけで若い夫婦もおり昼間は人も多く見られた。  掬躬津彌生たちの事故の現場もこの集落から少し離れた場所にあり,山本たちがいる場所から歩いて三十分ほどの場所だった。  二人が音を立てずに民家の庭を確認しながら進むと,夜中にもかかわらず洗濯物が干しっぱなしの家を見つけた。  犬がいないことを確認してから庭に忍び込み,物干し竿に掛かっている男性モノの洗濯物を適当に取り込み,まずは真嘉内に着せた。 「知らないオッさんの服を着るの,かなり気持ぢ悪いでずね。使い古したパンツとが,マジで最悪です。しかもサイズがピッダリとか,マジで気持ち悪いっす」  真嘉内が文句を言いながらも服を着ると,山本も自分のサイズに合いそうな服を選んでキョロキョロと辺りを見回した。 「先輩,どうじだんですが?」 「いや,あまりにも生活音がしないんでな。まだ寝る時間には早いだろうし。それにあれだけ病院で騒いだのに外部から人が来る気配もない」  真嘉内も耳を澄ませて音を聞いた。 「確かに……まっだく音がないですね……」  身を低くして音を集めるようにキョロキョロしていた真嘉内が突然その動きを止めた。 「どうした? なにかあったか?」 「いえ……服は着だけど,靴はないのがなっで」  山本も身を低くして周囲を見回した。 「確かに,靴を履いてないのはおかしいな」
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