眷属なるモノ

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 しばらく靴を探しながら民家の玄関や庭を見て回ったが,靴を外に出している家はなく,あっても汚れた長靴が置かれている程度だった。 「ところで真嘉内,お前が救急搬送されてから半日も経ってないのに,お前のあの腕,何があったんだ? 病院に運ばれてからの出来事は覚えているか?」 「それが正直,よくわがらないんですよ。中華料理屋のオヤジに腕を落とされて,なんとか逃げだじで。救急車に乗って運ばれてるのは覚えてるんでずが,そこからの記憶がいっざいなぐで」 「そうか……」 「ただ,織田先生かはわからないんでずが,男の人が看護師と話しているのが聞こえて,再生とか,鬼の腕とか,そんな言葉を聞いたような気もするんでずよね」 「鬼の腕?」 「なんとなく一瞬意識が戻っだような,夢を見ているような,やけに気持ちよくなってて,現実とかわがらない,そんな感じだっだんですが,すぐにまた意識なくなっちゃっで」  山本は似合わない服を着る真嘉内が喉を押さえながら話している様子を黙って見ていたが,肩から先が無くなった左袖が視界に入りため息をついた。 「左腕,痛むか?」 「いえ……まっだぐ。それよりも傷口だったところが焼けるように熱いでずね。ずっと,この左腕があった場所から身体中に熱い何かが流れ続けでいる感じです」 「織田先生が人体実験でお前の腕を再生しようとしたんだろうな……それにしても,あの肉塊が鬼の腕か……?」  
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