眷属なるモノ

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 目立たないように民家から漏れる灯りを避けて茂みのなかを歩いていると,暗がりに人の気配を感じた。  二人が気配に気付いたときは既に相手は二人に気付いていて,月明かりの届かない場所に隠れて警戒しているのが感じられた。  月明かりが届かない場所にいるその人影は,二人の姿をしっかりと確認し,山本と真嘉内だと認識すると自ら明かりの当たる場所に移動した。 「なんだ……お巡りさんたち,こんな時間に茂みのなかで,なにやってるんだ?」  淡い月明かりに照らされた小柄な女性は,驚いた表情で寄ってきた。その横には年老いた芝犬が呼吸を荒くして二人への警戒を怠らなかった。 「ああ……富岡さんか。こんばんは」 「こんばんはじゃねえ。こんな時間にお巡りさんたち,何やってんだ? そんな人の歩かない場所を真っ暗ななか……危ないだろ。こんな時間になんかの事件の捜査か?」  富岡の婆さんが心配そうな顔をして二人に近づいてきたが,二人の姿に足を止めた。 「お巡りさんたち,なんでそんな格好してるんだ? なんで二人揃って裸足なんだ?」  山本が両手を頭の位置に上げて手のひらを見えるようにし,大きく深呼吸をしてから富岡の婆さんに近づいて行った。 「富岡さん,実はいま病院で大変なことが起こっててね。詳しいことは話せないんだけど,我々警察官が特別な捜査をしているところなんだよ。富岡さん,こんな時間に犬の散歩してて,おかしな連中を見なかったかな?」
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