追われるモノ

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「お疲れ。まぁ,意識はないだろうけど,取り敢えず抗菌薬だ。それに鎮痛薬と解熱剤。それとクソほど効く特別な薬だ。ガッツリ飲んどけ」  横たわり意識が朦朧といている彌生の口に錠剤を入れると,ペットボトルを押し込み,無理矢理薬を飲ませた。 「どうだ? 金を稼ぐ大変さが少しはわかったんじゃねえか? 次の客は十八時からだ。心配すんな,今夜のは歪んだ性癖のジジィ二人でお前には直接的な参加は求めてこない。二人ともオムツ履かないと生活に支障が出るレベルのケツから汁を垂らしっぱなしのゲイでな。若い女に見られながらするのが好きなんだよ」  彌生はぼんやりと頭の片隅に聞こえる裕翔の声を憎んだ。それと同時にこうして自らの身体を差し出しすことで,どこか薄れていた絶対に生き延びてやるという気持ちが沸々と湧き出していた。  三人の屈強なモンゴル人に犯され,抵抗を許されないまま全身の粘膜が擦り切れる感覚と内臓をぐちゃぐちゃに掻き回されているような感覚が脳裏に浮かび,なぜ裕翔があんな連中とつながっているのか,全員が共通して言う「先生」とは誰かが気になり不思議に思った。  ベンチに横たわりながら,股の感覚が麻痺して熱をもって脈打つのを感じていた。これまで男と寝たのは裕翔を含めて百人は超えていた。それが三人増えた程度で彌生にとっては意味がなかったが,これほど物扱いされ,壊されそうになったのは久しぶりだった。 『ナメてた……そこらへんのクソみたいな男相手だったら,なんとかなったのに……予想外だ……こんな暴力的な……一切の快楽のないセックスがあるなんて……あのころと……変わらない……男なんて皆んな死んだらいい……』  顎が痛み口の中に広がる血の味がいつもと違う気がして気持ち悪かった。
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