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しばらくすると岸が所内に耳打ちした。
「そうか。わかった。……橋爪くん。悪いんだけど場所を変えよう。パトカーに乗ってくれるかな」
「えぇっ? 何で今からーー。もう、一等当たったのは辞退しますから、帰らせてくださいよ。全く何だよ、この抽選会は。僕はこんな茶番に付き合ってるほどヒマじゃないんです!」
「ちょいちょい、橋爪くん。勝手にそんなことされたら困るんだよ。これから古株特上湾岸署に行くから。この財布の持ち主がそこにいるんだとよ。
財布を返すのもそうだが、君が犯人かどうか確認したいそうだ」
「犯人ーー?」
「そうだ。犯人は中肉中背、黒い上着に帽子を被っている。まさしく今の君と同じだ。だが、君が言うように、別に犯人がいるのかもしれない。疑いを晴らすには出向くことを躊躇しないほうがいいんじゃないのか? それとも自信ないとか」
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