古株特上湾岸署

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「月並交番の所内といいます。財布と本人を連れてきました」  そういうと、三人は手前の部屋に通された。 「ここで少しお待ちください」  本物の取調室だ。本来なら橋爪は〝これじゃ被疑者扱いだ〟と叫びたいところだが、何もやっていないが故に、滅多に入れない本物に微妙に心が弾む。 ーーあの鏡の向こうに警察や目撃者なんかがいるんだよな。 「しかしまぁ。財布の持ち主も、財布のなかにあんなに札を入れるって趣味悪いよな」  待っている間、所内が本音を漏らす。 「所内さんもそう思います? そうですよね、今や時代はキャッシュレスですよ。あれじゃあ金持ち自慢みたいで、逆に取ってくれと言ってるようなもんですよ」 「だよな。俺ならさーー」 「あの……。お話し中悪いんですけど、僕は盗んでいませんからね。月並商店街の抽選会に行っただけで、そしたら一等が当たってーー」 「えっ! 君、一等当たったの? スゲェ!」 「一等の商品って何なんです?」 「例年、旅行だよ。いいなぁ、うちのカミさんなんか、何個ティッシュを持ってきたことか。ワハハハ」
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