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抽選会をよく知る所内は、過去の当選者の話を皆に聞かせた。昨年の当選者リュウジは、旅行先で出会った女性と仲良くなって毎日連絡を取り合っているとか、一昨年当選のミツコさんは泊まった先で偶然火球を見たとか、みんな旅先で心に残る出来事があるのが共通しているという。
ミラー越しに全て見聞きされていることも忘れて仲良く語り合う三人。ちょっとは尋問しないのかと、湾岸署員は月並のレベルを思い知る。そしてガチャリとドアを開け、湾岸署員が部屋に入ってきた。
「お疲れ様でした。橋爪くん、財布を拾ってくれてどうもありがとう。中身を一応確認したけども、持ち主が大丈夫そうだと言ってたので、これでいいでしょう。もう帰っていいですよ」
「え。いいんですか?」
岸が驚いて目を見開く。
「うーん。折角連れてきてくれたんだけれど、この人じゃないみたいだ。服装は似てても全体の雰囲気や、ましてこんなヤワじゃないって。
橋爪くん。遅くに引っ張ってきちゃって悪かったね」
湾岸署の森山はポンポンと橋爪の肩を叩いた。
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