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「まぁこれだけ入ってる現金が一枚も抜かれていないのが不思議だけど、犯人からすれば枚数は多いしカードも多いし、バラバラになるから財布に入れたまま持っていたということだろうな。
取られた被害者は、今日は月並の実家に遊びに来ていたそうだ。愛車のオープンカーから降りたときを狙って盗まれたと言っていた。
財布が無事に戻って何よりだ。君たちもご苦労様」
「何だぁ。あのときの男じゃなかったのか」
「結構走りましたよねぇ、所内さん。犯人は僕らと遭遇した途端、突然逃げましたもんね。コイツはおかしいって必死に追いかけたんですよ」
「だよなぁ。それでやっと見つけたのが君だよ、橋爪くん。見た目の服装は黒だし、現物持ってるから間違いないと確信したのにな」
湾岸署員が所内を見つめ、少し語尾を強くして言った。
「所内くんーー。悪事をするやつの目は、こんな優しい目をしておらんよ。月並はのほほんとしたイイ町だけど、君らはもう少し疑わしき人物を見る目、養わんとな」
平和な月並にも弱点がある。悪事も進化する現代、事件のない月並ならではの緊張感のなさが案外盲点なのかもしれない。
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