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帰り道
湾岸署を出て星空を見上げる。すっかり夜に囲まれた。
「じゃあ送ってくから。乗りなさい」
所内が橋爪に、アッチアッチと後部座席を指さした。岸は運転席に乗り込むとデュワンとエンジンをかけ、マフラーから余裕のサウンドを轟かせる。
「橋爪くん。悪かったね、ホント」
「せっかく当たった抽選会も終わっちゃったでしょうねぇ」
「もういいですよ。今から行ったって、自治会長はとっくに寝てるだろうし。年寄りの朝は早いんです。それより腹が空きました」
「そうか。こんな時間だもんな。交番に戻ったら、お詫びに何か食べさせてあげるよ」
「ホントですか?」
橋爪は今日初めての笑顔を見せた。
「それなら、ハリコミ二郎でラーメンでも頼みます? エンザイ太郎の焼き肉定食も美味しいですけど」
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