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「そこの45-◯◯の青いクルマ、スピード落として。あおり運転はやめなさい」
助手席に乗る所内が呼びかける。すると警察車両に気づいた青のクルマは、赤いクルマを抜き去って信号無視で加速した。
「あ。道交法違反ですよ、所内さん」
「追いかけろ、岸!」
「はい!」
赤灯を回し、岸はハンドルを握る手が久々に熱くなった。
「えっ、えーっ? 追いかけるんですかぁ? 今度はどこに行くんです?」
「知らねぇよ。青いクルマに聞け」
所内も岸も、あのクルマを追いかけることに集中し、取り逃がすまいと目を凝らす。パトカーは追跡を続け、環状二号線に乗って時速七十キロ以上で追いかける。
「ちょっとちょっと! ここは六十キロ道路ですよッ」
「ちんたら走ってたら追いつかないだろうが」
足回りが固くない普通のパトカーは、ハンドルを切るたび車体は大きく左右に沈む。後部座席では橋爪ひとりが荒波に揉まれていた。
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