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ブワァッ、ブワァン。キキキキッ。
岸のハンドル操作は、橋爪をメトロノームみたいに大きく揺らした。
「うわっ危ない。アタッ、イテッ」
ブレーキングでは前の座席に当たり、ハンドル操作でGを体験する。前方を見る余裕すらなかった。
キュッキッキッキ、ガシャーン!
「おっ、やったか?」
青いクルマはカーブを切った際、曲がりきれずにガードレールに接触した。ボンネットがへこみ、ヘッドライトが割れて片目が潰れる。これで終わったかと思いきや、バックを入れて再始動。歩道にいた歩行者は、驚いた拍子に二、三人が倒れた。
「岸。歩行者優先だ。停めろ」
「はい」
所内らは倒れた歩行者にケガの状態を聞きに出た。橋爪はしばらくお留守番。待っている間、通行人と目が合った。
ーーどうせ犯人と思われてんだろうな。
所内が戻ってきた。歩行者に大きなケガもなく、無難で済んだ。あぁいう無謀な運転をする者は心が病んでいる。あれだけのパワーを日常生活に向けてくれたら、もっと有意義な毎日を送れるのだろうにと所内は思う。
「戻ろうや」
気がつくと海岸線を走っていた。視界の左半分は真っ暗で、今の時間は午後の十一時。
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