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午後三時。日が傾きを見せ始めると、途端に風が冷たくなる。太陽はいそいそと夜の支度へと移り始め、茜色の夕日を見せた。
抽選会も終わりに近づく。買い物客は当選者が出ていないことを承知して、会場の前を通るたびにチラチラと様子を見ていく。
「和田さん。ホントに金色の玉ァ入ってんだよなぁ」
副会長の川西が、ストーブに手をかざしながら和田に問いかけた。和田はガラガラを小刻みに横にゆすってみると、ジャラジャラと中で音がした。
「入ってるよ。最初に確認したんだから」
「あのぉ、すみません。いいですか?」
二十代後半くらいの、帽子に黒のダウンジャケットを着た、色白の男が抽選券一枚を手にして立っていた。
「抽選? あぁいいですよ。券ください」
その男は昨年からこの地域で一人暮らしを始めた一般社会人。橋爪シュウマという。橋爪の手元のエコバッグには、先程買った食材が入っている。
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