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「とりあえず交番で話を聞かせてくれるかな」
ーー何だろう、これって。
抽選会での当選、遅い自治会長、走ってくる男、落とした財布、警察ーー。突然のことばかりで混乱する橋爪は、一般人向けのドッキリか? と頭の中でむりやり点と点で結ぼうとした。
「あの、さっき走ってきた人がこの財布……」
「はいはい、交番で聞くから。ちょっと来て」
リアルな警察の一連の動き。考える間も与えず橋爪を連れて行く。川西はどこまで飲み物を取りに行ったのか、抽選会場に誰もいなくなることを気にかけながら……。
橋爪シュウマ。はじめての容疑者。
月並交番はいつでも静か。何ごとも起こらない平和な町。高齢化している町だが、こころはあったかい人たちばかり。ここに配置される警察官も温厚な月並出身者が多く、みな知った顔だ。
今日も難なく終わるはずの一日に、小さな波が立つ。
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