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「免許証見せて」
所内が確認した。
「橋爪シュウマ。平成六年四月……。あっ、そうだ。岸くん。署のほうに連絡してくれるかな。財布見つかったって」
「わかりました」
「あの〜。このイベントはどこまで続くんですか。僕にも用事があって、すぐにでも帰りたいんですけど」
「君さ。この財布どうしたの?」
所内が問いかける。
「これはさっき走ってきた男が落としてったものです」
「走ってきた男? 君のことだろう」
「僕ぅ? 違いますよッ。さっき男が一目散で走ってきたんですって。それでポケットから何か落としたみたいだから『落としましたよ』って声を掛けたんですが、そのまま走り去ってしまったんです。
遠目で見てもそれが財布だとわかったんで、拾って警察に届けようと思ってたところに、お巡りさんが来たんですよ」
所内は椅子の背もたれに寄りかかり、鼻から疑ってる素振りを見せた。
「ふっ。そんな誰でも言えるようなことを」
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