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当選
今は冬。クリスマスも正月ボケも過ぎた一月末、ここ月並商店街の一角で、新春オメデトウ抽選会が行われていた。
わずか三日間の運だめし。最終日の今日も、一等『日帰り旅行』の金色の玉はまだガラガラのなか。幸運の女神はいつその玉を出すのか。列をなす住民らは、自治会長がダンボールと模造紙で作った、年老いた女神に当選を祈る。
「あぁ残念。赤い玉はポケットティッシュね。はい、次の方どうぞ」
約二十店舗で構成される商店街で、レシート三千円につき一枚抽選券が貰える。合算もOK。毎年商品は入れ替わり、昨年一等は温泉旅行、二等は商品券五千円を三本、三等は日用品、四等お菓子の詰め合わせ、五等ポケットティッシュ。空くじなし。
「よっ! 待ってました、去年の当選者ッ」
昨年当選して一泊の温泉旅行に行った、巻貝リュウジが抽選会にきた。
『おおおぉ〜っ』と周囲がどよめき、住民らの気持ちが何となく一歩後退する。当選経験者はどこかオーラがあるように見えていけない。
「リュウさん。連覇やってくれよッ!」
抽選会を取りしきる肉屋の和田が、威勢のいい声をあげた。
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