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伸ばした手。さらに人差し指をピンと張ると君は警戒しながらそれを舐めた。
天気予報は曇りだった。それなのに庭のハナミズキに真っ白な雪が積もり始めていた。
雪は舞うものだと思っていた僕にはためくレースのカーテンみたいなそれは不思議なものだった。
ただジッと見つめていた。隊列を組んだ小鳥のようだとか、ありったけの記憶で形容してもたとえきれない自然の力に圧倒し心惹かれていたのだと思う。
視界に黒く蠢くなにかを捉え、庭に視線を落とすと雪をたっぷり乗せた中型犬だった。その場で足踏みをし、その目は僕に語りかけていた。
寒い。いや、そうじゃない。ツライ。違う。助けて。
ソファーに掛けてあったグレージュの膝掛けを掴んで駆け出していく。
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