白に黒 水面に墨汁

4/6
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 なぜなのか僕はからかわれるよりずっと恥ずかしくて、その場から消えてしまいたかった。  その後、風邪を引き学校を休み、そのまま冬休みに突入し、冬休みが明けても僕は学校に行かないと言って母を困らせていた。  ボンヤリとそんなことを思い出していたら、差し出した指を黒い犬は唐突に舐めた。 「あ!」  声を出してしまったら、犬が驚き一歩退いた。 「ごめん、僕が悪かった。ビックリしただけだよ」  もう一度根気よく犬が近付いてくるのを待った。なかなか寄ってこない。 「怒ってないよ」  そうさ、青島は怒ったんじゃない。僕を救おうとしただけなのに。  犬は再びジリジリとほふく前進で近付いてきて僕の指を舐めた。犬は出来た。 「信用するって勇気がいるんだ」  犬は僕の言葉を理解したとは思えない。ただ僕の指を舐めてからなぜか甘噛をしてきて僕を慌てさせ、笑わせた。助けてやったのに噛むやつがあるかと僕は自嘲する。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!