白に黒 水面に墨汁

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 犬は近所に引っ越してきた人の飼い犬で、翌日には嬉しそうに去っていった。  僕はと言うと、雪が溶け出した道を学生服に身を包み歩いていく。阿呆みたいに緊張して、グチャグチャの道を進んでいた。  ずっと前から僕は繰り返していたんだ。『僕はイジメられているわけじゃない』って。僕を笑う皆と笑っていれば、イジメじゃないんだと思おうとしていた。  前に見慣れた背中を見つけ、手を握りしめる。一歩前に踏み出すと、二歩三歩と次々に足が前に出た。 「青島くん」 「あ? ああ、出てきたか。おは」  青島はクールだ。僕を特別扱いしない。 「これからはちゃんと学校行くし」 「そりゃそうだ」  真っ当な青島の反応に僕はなんだかもう少し話がしたいと思ってしまった。 「友達ってさ、どうやったらなれんのかな」  青島は眉をピクリと動かして「さぁ?」と素っ気ない。 「青島くんは友達だと思いたい」  そこでとうとう青島は足を止めて僕を見た。 「そういうのは辞めろ。クソ恥ずかしいから──友達だと思ったら友達でいいから」  破顔し僕は「おめでとう、君は友達一号だ」と宣言した。  呆れた顔で「はいはい、おめでとう」と青島が再び歩き始めた。  楽しくなった僕がやたらと話しかけて青島を困らせていたことは薄々感じていたけれど、青島は僕を無視することなく歩いていく。
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