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――それでも、あたしがどんなにダダをこねてもお構いなしに、両親はあたしの茗桜女子学院初等部の〝お受験〟を決めてしまい、あたしは渋々それに従うしかなかった。
受験当日、先に面談のある両親と離され、ひとり受験会場である教室で待たされることになったあたしは、ウンザリしながら椅子に座り、床に届かないはずのない足をブラブラさせていた。
まず何がイヤだったかといえば、制服のスカート姿で八王子まで連れていかれたこと。それだけでもイヤだったのに、白いフリフリのハイソックスまで穿かされていた。普段穿いていたような赤やオレンジのボーダーのソックスは、お受験の場には似つかわしくないんだとか何とか。
まだ時間が早かったためか、教室にはあたしの他にはもう一人、茶色がかったサラサラの髪にパッチリと大きな目をした、〝女の子の模範〟のような子しかいなかった。
私立の幼稚園と思われる、高級感漂う(ようにあたしには見えた)制服に身を包んだその女の子こそ、絢乃だった。
「――ねえ、あなたはどこからきたの?」
「……えっ、あたし?」
あたしに気づいた絢乃が、優雅に席を立ってあたしの席の方に歩いてきて声をかけてきた。
この当時六歳。その年で立ち振る舞いまで洗練されてるなんて、あたしはただビックリしていた。六歳なりに「このコ、タダモノじゃないな」と思ったことを憶えている。
「あ……、きゅうにこえかけてビックリしちゃったよね? まずはじぶんがなのらなきゃ。わたしはしのざわあやの。じゆうがおかからきたの」
「ふぅん、あやのちゃんっていうんだね。あたしはなかがわりほ。しんじゅくからきたんだよ」
あたしが質問に答えたのが嬉しかったらしく、絢乃は顔をくしゃっとさせて笑った。まるで天使の笑顔みたいで、「可愛い!」と思った。
「りほちゃんね、よろしく。――ねえ、りほちゃんはどうしてこのがっこうをうけることにしたの?」
「どうして……っていわれても……。あたしはおじゅけんなんかイヤだったんだよ。でも、おとうさんとおかあさんがどうしても、っていうから。『おんなのこばっかりのがっこうにいって、すこしはおんなのこらしくなりなさい』って。あーあ、あやのちゃんはいいなぁ。じゅうぶんおんなのこらしくて」
「そんなことないよ。わたしはね、このがっこうのせいふくがきたくて、じぶんからパパとママに『うけたい』っていったの」
「じぶんから?」
「うん! だって、このがっこうのせいふくカワイイんだもん」
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