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「せいふく?」
「うん」
絢乃が受験を決めた理由は、何とも女の子らしくて可愛い理由だった。親に押し付けられてイヤイヤ受けに行ったあたしとはエラい違いである。
「そっかぁ。あやのちゃんがきたらカワイイだろうな、このがっこうのせいふく。ごうかくできたらいいね」
「りほちゃんがきても、きっとカワイイよ。わたし、りほちゃんといっしょにきたいなぁ」
「……えっ? あたしと?」
「うん。ね、りほちゃん。わたしたち、おともだちになろう? いっしょにこのがっこうにごうかくしよう?」
〝お友達〟というフレーズが、あたしの胸を打った。
こんなに女の子らしいコが、あたしと友達になりたがってる……。このコと仲良くなったら、もしかしてあたしも……。そう思ったのだ。その結果、あたしが女の子らしくなったかどうかは、絢乃に訊いてみないと何とも言えない。
でも、あんなにイヤイヤだったお受験が、絢乃との出会いでイヤじゃなくなったことは確かだ。このコと一緒にこの学校の制服を着て、同じ学校に行きたい。そんな気持ちが不思議と湧いてきた。
「うんっ! あたしもガンバるっ! あやのちゃんといっしょにこのがっこうにはいりたいもん!」
――その後の試験や面接で、あたしが急にやる気を出したので両親はビックリしていた。
「里歩、どうしたの? あんなにお受験嫌がってたのに、急にやる気まんまんになっちゃって。お腹でもこわした?」
帰りに外食することになり、入ったファミレスで母があたしの変化に首を傾げ、おかしなことを言いだした。
「おかあさん、しつれいだよ! あたしね、きょうあたらしいおともだちができたんだ」
お子様ハンバーグプレートを食べながら、あたしは母にそう答えた。
「お友達? お名前は聞いた?」
「うん。しのざわあやのちゃんっていうんだって。じゆうがおかにすんでるっていってたよ」
「自由ヶ丘の篠沢……っていったら、あの〈篠沢グループ〉の会長のお孫さんじゃないか! そういえば、お孫さんは確か里歩と同い年だって聞いたことあったな」
「えっ? おとうさん、あやのちゃんのおじいちゃんって、そんなにゆうめいなひとなの?」
父が腰を抜かさんばかりに驚いていたので、あたしはキョトンとして訊ねた。
当時六歳だったあたしには、ピンとこなかったけど。あの当時、篠沢グループの会長さんは今は亡き絢乃のお祖父さんだった。絢乃のお父さんはまだグループのイチ役員に過ぎなかったけど、お母さんは元々そこのお嬢さまだったので、絢乃も小さなお嬢さまだったわけである。
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