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でも、そんなの関係なく、あたしは絢乃と友だちになりたかった。家柄とか立場とかは取っ払って、あくまでも対等な関係でいたかったのだ。
そしてそんな彼女との友情は、十九歳になった今でもずっと続いている。
****
そのお受験の合格発表があったのは、年が明けた一月の半ばだった。
「――里歩ちゃん、いまお母さんからお電話を頂いたんだけどね」
受験が終わってからは以前のお転婆な女の子に戻り、その日のお昼休みにもいつものように男の子たちと園庭を走り回っていたあたしを、幼稚園の先生が呼び止めた。
「えっ、おかあさんから? せんせい、おかあさんはなんていってたの?」
「里歩ちゃん、秋にお受験したでしょう? 茗桜女子学院の」
「うん」
あたしの組の担任だったエミ先生は、次の瞬間喜びを爆発させてこう言った。
「おめでとう、里歩ちゃん! 合格したんだって! よかったね!」
「……え!? ごうかくしたの!?」
ビックリまなこになったあたしの両手を取って、エミ先生は「そうだよ!」と言ってピョンピョン飛び跳ねた。
ちなみに、エミ先生は当時二十三歳。短大を卒業して幼稚園の先生になったそうだから、まだ三年目という若さだったことになる。
「やった……、やったぁ! ごうかく! わぁいっ!」
あれだけお受験を嫌がっていたのがウソみたいに、あたしも飛び跳ねて喜んでいた。
だって、これで絢乃ちゃんと同じ学校に行けるんだ、と思ったから……。
公立の小学校に入学する友だちと離れるのは、ちょっと淋しかったけど。それよりもあたしには絢乃の方が大事だった。だから、あたしはあの時の選択を後悔はしていない。
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