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プロローグ
――六月のよく晴れた日。今日は親友の結婚式だ。
ベアトップの真っ白なウェディングドレスに身を包んだ親友はまだ十九歳、あたしと同い年である。でも、経済界で華々しく活躍している大財閥の会長で、彼女のお家は日本でもトップクラスの財力を誇る名家だ。
彼女は今、白いタキシード姿の愛する人が待つ祭壇の前へと一歩、また一歩と歩みを進めている。彼女と一緒にバージンロードを歩いているのはお父さんじゃなく、女性らしい裾の広がったパンツスーツを着たお母さんだ。
だって、お父さんはもうこの世にいないから。一年半ほど前に、末期ガンで帰らぬ人となってしまったから……。
――絢乃、よかったね。おめでとう! 大好きな貢さんと幸せになるんだよ。
だって、あたしはずっとあんたのことを見てきたから。あんたがお父さんの病気を知ってショックを受けてた時も、初めての恋に戸惑ってた時も。
お父さんの遺志を継いで、最年少で〈篠沢グループ〉の会長として頑張ってる姿も。
貢さんとの仲がこじれて、苦しんでたこともあったね。でも、もう大丈夫だよね?
これからは、お婿さんの貢さんと一緒にあったかい家庭を築いていってね。もちろん、仕事も頑張って! その責任は重いと思うけど、責任感の強いあんたなら大丈夫だね。
でもね……、もしもまた悩んだり、困ったことが起きた時にはいつでもあたしのこと頼ってよね。
だってあたしは、あんたのいちばんの味方なんだから。小学校の〝お受験〟の時からずっと――。
そんなあたし・中川里歩と絢乃の友情の始まりは、私立茗桜女子学院初等部の受験日まで遡る――。
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