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クーラーのきいた屋内に戻ると、汗が急激に冷える。彩矢はキッチンで何かをしており、蓮はいつものように畳部屋でスマホに齧りついている。
信次は、キッチンにいる彩矢にテニスに行かないかと誘った。彩矢が振り返る。彩矢は無表情に「そうね」とだけ言った。機嫌が悪いのか、単調な口調を訝って訊ねる。
「どうした?具合でも悪いのか?」
「いいえ?なんでそう思うの?」
「いや、なんとなく」
「悪くないわ。大丈夫よ」
抑揚のない返答に、信次は首を傾げる。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫よ」と口先だけで言うと、彩矢はくるりと背を向けてしまった。
その後、運よく近くのテニスコートの予約ができた。行こうと誘うと、彩矢は先程と同じ調子で断って来た。
「さっきは行くって言っただろ」
「そうねって言ったのよ。来たばかりだし、少し休みたいの」
せっかく優希が上達したところを見せたがっていたのに、と信次は優希を気遣う。優希は淋しそうな顔をしていた。信次は蓮の方を見て、声を上げる。
「蓮、お前はどうする」
「いい」
だろうな、と零して、信次はスポーツ用の着替えをクローゼットから引っ張り出した。
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