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* 「生まれ変わってから七年余り。結局、真衣は別の男と結婚してしまったな」  中身の残っていない缶を傾けたまま、杏は言った。 「花嫁をさらって逃げるとかは考えなかったのか?」 「死神が人間界の映画を知ってるのか?」 「暇つぶしに見ることはあるな。新郎から奪う方法だっていくつかあるだろう? 真衣と結婚するつもりだったのではなかったのか?」  杏が披露宴で陸斗として言った内容について触れているとわかり、陸斗は苦笑した。 「結婚……するつもりだったよ。『オレは優馬だ』って正体を言いたかったよ。でも、もしわかってくれたとして……、陸斗(オレ)が大人になるまで真衣を待たせたら真衣は何歳になるんだよ」 「まぁあと十年はかかるな」 「杏から、真衣は優馬(オレ)が死んでからずっと泣いてるって聞いただろ? 真衣を泣かせるわけにいかないかな、だから転生しなきゃって思った。でも時間はかかったけど、真衣はちゃんと前に進んでた。(あいつ)の隣で真衣は幸せそうだった。それを見届けることができて本当によかった」 「そういうものなのか? 強がりではないのか?」 「強がりとかじゃなくてさ。オレを引きずることなく、幸せになった真衣を見ることができた、それだけでもう思い残すことはないよ」 「これで人生が終わるわけではないとさっきも――」 「いや」  陸斗が杏の言葉を遮った。 「杏」 「なんだ?」  微かな風が木々の葉を揺らし、葉が擦れる音が響く。杏は陸斗が言おうとしていることが何なのかわからなかった。 「オレの記憶から、真衣への思いだけを消すことはできるかな?」  その言葉を聞いた直後、一瞬だけ目を見開いた後に杏は腹を抱えだすと「オマエは本当に面白い奴だな」と笑った。
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