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 披露宴は大盛況のうちに終わり、豊と真衣は会場の外でゲストへのお見送りに立った。学生時代の友人、会社の同僚・上司たちといった笑顔で去っていく招待客一人一人に二人で選んだプチギフトを手渡していった。  親族が退場する番となり、真衣の姉夫婦が会場から出てきた。当然、姉夫婦の後ろには、陸斗もいた。  陸斗に気づいた豊は背後のテーブルに置いてあったプレゼント用包装紙に包まれた大きな箱を取った。 「陸斗、本当に今日はありがとな。オマエ、本当にかっこよかった」  豊は陸斗の頭をくしゃくしゃと右手で撫でてから、左手に持つ箱を渡した。今日のお祝いの言葉に対する謝礼として、姉夫婦から聞いていた陸斗が欲しいという最新ゲーム機だった。  陸斗は受け取ってよいのかわからず、両親の顔を窺ったが、微笑む両親の顔を見て、「ありがとう」と述べてその箱を受け取った。  喜びの笑みを浮かべる少年の目線に合わせるべく、真衣は膝を折った。介添えの杏がしゃがみやすいようドレスの裾を持った。 「陸斗、すっごく気持ちのこもったメッセージありがとうね。私、感動して泣いちゃったよ」 「ちゃんとおめでとうって言いたかったんだ。ずっと言えなくてごめんなさい」 「いいのいいの。こんなすてきなメッセージもらえただけで幸せー」  そう言って、少年を抱き寄せたときだった。少年は真衣の耳元である言葉を囁いた。 「雨晴海岸にも連れていってあげられなくてごめん」    頭へと響いた言葉に耳を疑い、真衣は陸斗を離した。  いま陸斗は何を言ったのだ、雨晴海岸、なぜ陸斗がそんな場所の名前を言うのだろうか、真衣には理解ができなかった。 「陸斗……?」 「ほら、陸斗、後ろでおばあちゃんたち待ってるでしょ。早く歩きなさい」  母に促され「はーい」と言って陸斗は先へと進んだ。少し距離が離れてから陸斗は振り返った。そして、まだ放心状態の真衣へ向かって陸斗は叫んだ。 「ばいばい、真衣ちゃん」  無邪気な少年の笑顔に、真衣は遠い日の記憶が揺れ動くことを感じた。
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