カレンダー

1/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 私は仕事の関係で、東南アジアの某国を訪れていた。仕事はつつがなく進行し、夕方頃には終わり、後は自由時間となった。(くに)を出る前に同僚からは、暗い時間に露店の方には行くなと散々言われたが、好奇心の方が強かったので露店のある方角への路地を歩いた。  近づくにつれて高揚を醸し出す喧騒が大きくなってくる。いかにも手書きのような看板には、現地語と英語が混ざった誘い文句が書かれていたが、ペンキは日に焼けていて、細部は掠れていることも少なくはない。  私は匂いに釣られて、牛串のようなものを買った。物価のせいかだいぶ安かった。すぐ隣では酒屋のような屋台があり、私はそこでビールを買った。プラスチックのコップに注がれたそれは、普段私が故郷で飲むものよりも不透明で、()()のようなものが浮いていた。極め付けに、飲み口に蠅が止まり、私はとても不快だった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!