廃魔法店のきおく

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 都市のはずれの森。その入り口。  何人もの旅人が歩き、別の町に行くために通り過ぎる道のり。閑散としているが、そこそこの人通りがある。  そこに、既に主人の居なくなった魔法店がある。  壁や屋根にはツタが絡まり、庭はあらゆる草花が好き勝手に咲き乱れている。不思議と窓や床は、外の様子と比べて綺麗だが、それでも薄汚れていた。かつて店の備品がところ狭しと並んでいたであろう棚は  、薄く積もった埃以外何もなく、奥の部屋には木の机が置かれている。その上に水晶があり、あまり管理の行き届いていない建物に似つかわしくない輝きを放っていた。  かつては、これから旅の準備をする者や常連が訪れ、人の良い老店主に持てなされ、心の憩いだった場所。    そこには物語があった。一つ一つは些細な出来事だが、主人に、そして何より魔法店にとって大切な、記憶という思い出。  その一部を見ていこうと思う。
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