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きっとあの『ありがとう』には色々な想いが込められていたのだろう。
約束を守ってくれてありがとう。
自分の選択を容認してくれてありがとう。
自分と翼を守り続けてくれて…
ありがとう。
「… …そうか… …うん。確かに、聴いたよ… …」
「…どっちが泣き虫だよ?」
「あははっ ダメだね。年を取ると涙もろくなってしまって…。それにしても、今回は月雲さんに感謝だね。こんなにゆっくりと君と話せるとは思っていなかったから…」
「しおりさん?」
突然本郷の口から発せられた栞の名前に、ドキッとした。
「月雲さんに後押ししてもらってね?翼としっかり向き合ってほしいと言われたよ…でないと、君が可哀想だって。…彼女は、素敵な女性だね?」
そう言って翼ににっと微笑んで見せる本郷は、翼の気持ちなどお見通しなのだろうか。
気恥ずかしい気持ちになり、ふいっと視線を逸らしてしまう。
「ただ、なかなか手強いライバルもいるようだし…
翼も頑張らないとね~?」
「・・・・」
「翼…僕は今でもずっと、後悔している。
あの時、君たちを置いて日本を離れることが最善だと思いそうしたわけなんだけど…僕のその選択は、本当に正しかったのかな…もしかすると、他の未来を選ぶこともできたんじゃないかって…
君は、決して後悔しないように…自分の気持ちと、しっかり向き合うんだよ」
そう言った本郷がどこか
吹っ切れたように見えたのは…
気のせいだろうか。
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