嘘と真実

8/12
前へ
/159ページ
次へ
俊輔は母親の後輩にあたる。 高校を卒業する際、一緒に暮らさないかと誘われたのだ。俊輔の母からの評価は「いい加減だけど、気のいい奴」といったものだった。 実際、兄弟のいない翼にとっては年の離れた兄のような存在で、昔から(よく言うと)面倒を見てもらっていた。 そして、カメラマンというと、この様な特異体質を持っているものなのだろうか? 千葉同様に、俊輔にも翼の機嫌が伺えるという不思議な能力があった。 俊輔に言うと「俺は天才だからな!」とおちゃらけて返ってくるため、もう言わないことにした。 「相変わらず、人の機嫌をカメラで覗くのやめてくれる?えっち」 「ん~?俺はカメラで覗かなくても、お前の機嫌くらい分かるよ。…あれだろ?生理」 「・・・おじさん、それセクハラだよ?」 「え!?ヤダ、ごめん!!」 「あははっ くだらな~」 そう言って笑う翼の頭をぐしゃぐしゃっと撫で付け 飯に行こう!と俊輔が言った。 先ほどまでの暗い気持ちが、俊輔のおかげで幾分か晴れた気がした。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

342人が本棚に入れています
本棚に追加