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弥生は自分も少し前までは量を食べられなかった事を振り返った。しかし長兄に食事を摂るよう言われた事や、ほぼ毎晩の体造りをするようになって食が随分と増えたのだ。そうすると以前よりも体の動きが楽になり、活発になったように感じる。疲れないし、自然に力が湧いている感じだ。授業中も集中して起きていられる。
何かにはっとした弥生はふと片手をグーパーした。実はこの瞬間、弥生はようやく食べる事がもたらす効果をひとつ実感した。
「弥生君。どうかした?」
三吉は不思議そうに弥生を凝視した。弥生は驚きと感銘を受けている事を口にしようとしたが口をぐっと結んで止めた。“食べる=パワーが出る!”なんて当たり前の事を、なんなら小学生でも知ってそうな事をテスト学年トップの三吉少年に意気揚々に語るところだった。それに、何となく鍛えている事は言いたくなかったのもある。しかし、弥生はテンションが上がっていた。無駄だと思っていた食事という行為の重要さにいま気が付いたのだ。
「やっぱり兄さんは凄い・・・!」
弥生は握り拳を作り、空に羨望の眼差しを向けた。一方の三吉もつられて空を見てみたが、すぐに視線を弥生に戻した。
「え?何が?」
三吉は弥生の兄が何故登場したのかさっぱり分からなかった。ここに穣や神無がいたら、恐らく呆れた顔をするだろう。中学生の弥生の関心は結局のところ長男の皐月に繋がっているようだ。
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