飯をくえ

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飯をくえ

「いらない。」  はい、今日も頂きました。  一別もせず、学生鞄を肩にかけた弥生は、むすっとしながら台所を素通りし、外に出た。 「行ってらっしゃい!」  弥生は、いまだごはんも食べず、お弁当も受け取らなかった。それでも、かなめは毎日、“朝ごはんは?”、“お弁当は?”と声をかけ続けた。 「おはよ~。毎朝、大変だね。アイツもごはん食べないで、よく持つよね~。」 「おはよう、神無君。ほんとだよね。」  眠たそうに食卓に現れたのは、次男の神無だ。弥生の後ろ姿を目で追いながら、もはや感心したように呟いた。  神無は、毎朝遅刻気味に起きてきて、朝ごはんはしっかり食べたが、野菜が苦手で特に人参は必ず残した。しかし、天童家には“食べ物は残すべからず”という決まりがあったためか、本人も気にはしていた。 「だめだぁ~、人参。ごめんなさいかなめさん。」  と、いつもこんな感じで謝ってくるので一応、挑戦はしているようだ。
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