プライスレスミートソース

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 台所を後にした弥生は玄関へ行き靴をはいて中庭に出た。今夜は穣と格闘の稽古がある。格闘の稽古とは言っているが実践的な事がほとんどでそれが弥生のやる気を引き出していた。  時間が決まっているわけではないが大体遅れて穣がやって来るような感じでそれもそのはず。穣の部屋から中庭が見えるので穣は弥生が外に出て来るのが見えると自分もそこへ向かっていた。実は正直ここまで弥生が本気になるとは思っていなかった。 「おう。」   穣が声をかけると弥生は応える代わりに少し頷いた。 「にしても、お前真面目だよな。」  ほぼ毎日のように相手をしている穣は軽くため息を漏らした。穣からしたら仕事が終わって帰って来て夕飯を食べて、その後の時間だった。これが父親の気持ちかと想像すると、自分には何となくこの役は向かない気もする。 「真面目じゃねえ。さっさと始めんぞ。」  穣は内心で真面目だよとぼやき、困ったように薄ら笑っていつものように位置に付いた。弥生が学校で同級生と喧嘩してきて以来、穣がこうして相手をしているが既にかなりの腕を上げていた。お互い本気で立ち会わなければ怪我をするだろう。弥生は元々運動神経もその線の相性も良い。だからあっという間に強くなった。その辺のごろつき相手ならもう簡単に去なせるはずだ。だからこそ穣は困っていた。結構しんどいのだ。 「ふぅ。嫌になるくらい上達が早いぜ。さすが天童家の男。」  そう穣は口にしたが、弥生の動きは速さが武器だった。皐月のような重量感が格段に足りないのは体格からも明らかだったがそれを瞬発力で補っている。  
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