プライスレスミートソース

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「急にどうした?お前は紛れもなく天童家の子供だぞ。なんでそんな事思ったんだ?」  穣は弥生の方に近付いて不思議そうに様子を覗った。 「いや。ただ何となく。」  弥生はそう言うがさっきの質問は何となくの声色ではなかった。穣が反応に戸惑っているのを感じた弥生は話を切り替えるべく、再び両腕を構えた。 「今のは無し!ほら、続きやろうぜ。」  そう言って軽快にパンチを繰り出すと、穣は慌ててそれを避けた。  ”天童家“。弥生は自分の家系について普段の何気ない生活の中で俗に今でいう反社会組織だった事を屋敷の佇まいや時折来る如何にもな来客で実感する程度だった。しかしそれは外見的な部分で、弥生が真に知りたいのは自分の中に流れるものの由来だった。特に両親の事をだ。 「弥生。最近なんかあったのか?」 「なんもねーよ。」  穣は注意深くなっていた。弥生の用心棒(世話係)としての役割が天童家での使命だ。明らかに今までの弥生の質問とは内容が違っている事が気懸かりなのだろう。当分の間は面倒くさそうだと弥生は変な事を口走ったと後悔した。    この頃、体が軽い事に弥生は風呂で鏡を見ては不満を感じていた。身長だってそうだが筋肉が過剰に付くような骨格じゃないのは認めたくないがわかる。自分の腕や腹に触れながら、“本当にでかくなるのか。そもそもーーー”。ふと兄二人が頭を過り、考えれば考える程思うのは、あらゆる面で似ていないという事だった。
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