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それでもいつものように学校に行かなくてはならないのが案外弥生を安心させた。
自分の住む土地はどちらかといえば田舎だと思うが、不便さは感じず都会に行きたいとか憧れる事はまだなかった。
四時間目が終わるとようやく昼休みになる。弥生は無造作にさっきの時間まで使っていた教科書やノートを机の中に入れて、台所係が作った弁当を手に教室を出た。廊下は昼休みを喜ぶ生徒たちで今日も賑わっている。
「天童君!机借りるねー!」
弥生は後ろから聞こえてくる同級生の声を聞きながら返事もすることなく屋上が続く階段へ向かった。大抵自分の机は昼休みになると何人かのグループの女子達に使われているようだった。
屋上へ行くと三吉が先に来ていて、そしてこちらに向かって手を振った。対して弥生は反応も返事もしないがいつの間にか昼休みは並んで弁当を食べるようになっていた。
校庭の方から遊び声が聞こえてくる。もう弁当を食べ終えたのか、生徒達が元気に遊び回っているのを弥生は屋上のフェンス越しにすました目で見下ろした。
「調理実習。弥生君のクラスは何作るの?」
三吉は今日も美味しそうなサンドイッチを食べていた。すっかり昼休みは三吉がいるのが普通の光景になって、三吉も随分と弥生に馴れてきたのか話しかける頻度も増えた。
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