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菊江は横に首を振った。
「松っちゃんに頼みたい事があるの」
「なんだ」
菊江は顔を上げた。
頬は濡れ、瞳は妖しく光っていた。
「毒が欲しいの。手に入るかしら」
「なんとか手に入れてみせる。あいつに飲ませるんだな」
返事がない。
「菊江?」
「……わたしが飲む」
俺は驚き、菊江の肩に手をやった。
「何を言っているんだ!」
「男の松っちゃんには分からないよ! 知らなかったとはいえ、親の仇に色を売っていたなんて。こんなの、耐えられない」
苦しそうに顔を歪める菊江。
俺はそっと菊江を抱きしめた。
「必ず、毒を手に入れる。次に会う時、毒を渡すよ」
「松っちゃん」
俺は、覚悟を決めた。
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