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A child who has become a Murderer
俺の名前はシック。
物心ついた時からずっと1人でいる。
両親は最近死んだ。
寂しくはなかった。
仕方がないと思っていたから。
一人ぼっちも悪くないし、その方が気楽でいい。
何にも縛られず、自分の思うがままに過ごせる。俺の理想的な暮らし。
俺の唯一の楽しみは、
『殺人』だ。
毎晩、外に出ては人を殺し、家の中の地下室で解剖して遊ぶのが俺の日課だ。
殺人は独学で覚えた。
父の部屋や、母の部屋は綺麗に残しておいた。
父の部屋には沢山の書斎があって
哲学やら化学やら、難しい本ばかりだった。
殺しの本もあった。
文字は読める。
小さい頃に基本的な事は教えてもらったし、
人間としての礼儀や、生きていく上で必要なことは両親から既に教えて貰っていた。
ある日、組織から支配人が来た。
「シック様、いらっしゃいますか」
『…?何か…用ですか。』
支配人、アイリス。
組織のボス、ベルモンドのお気に入りである。
「シック様の双子の妹様をお連れしました。」
双子の妹…??
「先日、任務によりご両親が亡くなられました。その為、シック様の元へ妹様をお連れするよう命じられたのです。どうか、ご承知おきくださいませ。」
アイリスの後ろから、小さな女の子がひょこりと覗いた。
「では、私はこれで失礼致します。アメリア様、シック様の言う事をきちんと聞くように。」
そう言ってアイリスはアメリアを、置いて帰ってしまった。
「あなたが私のお兄ちゃん?」
第一声がそれか。
『さぁ…。妹がいる事すら初めて知ったのに、そんな事、分かるわけないだろ。』
「ふーん…。ねぇねぇ、シックはどうして一人ぼっちなの?どうして組織のところに居なかったの?」
『知らないよ。俺だけここに来させられたんだから。』
何でも質問してくるアメリアは、しつこくていちいち癪に障る…。俺にとっては邪魔者でしかない。
今夜、こいつも解剖して殺してしまおう。
1人の方がいい。
いや…。今から解剖するのもアリだな。
こんなヒョロヒョロ、直ぐに死ぬだろう。
俺は、地下室へ案内した。
アメリアは何も知らない。
俺の本当の姿を…。
「ねぇ」
アメリアがまたも喋りだした。
『なんだ』
「ここ、血の匂いする。何があるの?」
感がいい…。
流石、組織で過ごしてきただけあるな。
けど…そんな感は俺には通用しない。
『さぁね。俺も知らないよ。』
そして俺達は地下室の奥へと進んだ。
こっちにこれば誰の助けも呼べないし、
抵抗も出来ないだろう。
アメリアを椅子に座らせ、俺は鉈を、取りに行った。
『確かここに…っと。あったあった。』
ふふっ…。
さよなら、アメリア。
お前は俺の血となり、肉となり…。
踏み台になるんだ。
『待たせたね。アメ…リ…ア……??』
???
「あ、おかえりシック。その鉈はなんなのかなぁ?」
包丁…?
なんで…アメリアが…。持って…?
「あれっ、もしかして私を殺すつもりだったのかなぁ?あははっ」
アメリアは先程の女の子らしい雰囲気を消し、鷹のような鋭い目で俺を見つめる。
「あはっ、びっくりしたぁ?私もねぇ、殺しの訓練は受けてるんだよ。」
『あぁ…、あ、…そう、…。』
殺意を向けられたのは初めてだった。
その瞬間、俺は一瞬怯んだ。
それと同時に、ゾクゾクするような快感が身体中を走った。
プロに鍛えられた彼女の今の姿は《アメリア》という少女ではなく、アメリアでは無い何かに見えてしまう。
それもまた、快感のひとつになる。
自分と同等かそれ以上かの相手を前にし、俺は
刃物を向けているのだ。
殺し合いだ。と、本能が語る。
いつも通り、相手に凶器を向ける。
相手がいつ行動するか、どんな動きをしそうかを予測していつどんな行動をされても柔軟に対応できるよう構える。
「さぁ…来なよ、シック。」
彼女は冷静に呟く。
俺は鉈を振りかぶって、彼女に飛びつこうとするが、
ほんの1秒間時間が止まったように思えた。
『…?』
俺は地面に叩き付けられ、首元には冷たい何かがヒタリと当てられていた。
「遅い。」
あぁ、死ぬ…。
そう思ったが、いつまで経っても彼女は刃を引かない。
『何故…殺さない?』
「何故って…」
彼女は立ち上がって、俺に手を差し出した。
すると彼女は元のアメリアに戻って、
「家族だからよ」
と微笑んだ。
俺はその時、アメリアに負けた悔しさではなく
アメリアを大切にしたいという思いが募った。
「家族だからよ」と言った時、彼女の目は
時々会う大好きな両親の瞳とそっくりだったからだ。
途端に涙が溢れた。アメリアも泣いていた。
本当は一人ぼっちなんて嫌だった。
覚えてる。
あの時、両親がアジトへ行ってしまった時。
俺はまだ5歳で、父さんにも母さんにもベタベタ甘えているような、普通の人間だった時。
「母さん達はアジトに住まないといけなくなったの。だからシックは1人で頑張ってね。」
と言われた時の絶望感。
1人?どうして突然…そんな…?
行ってしまった後、俺はひたすら泣いた。
その日から俺は感情を殺すようにした。
寂しくない、俺は1人で平気だと言い聞かせて
何とか今日まで保ってきた。
心の奥底ではずっと寂しかったんだ。
アメリアは俺が寂しかったのを知っていた。
最初から悟っていた。
だから泣いた。
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だから泣いた。
私はアジトに住んでいた。
両親はもちろんいた。
でも、常に一緒にはいない。
私は5歳から独房のような場所で毎日を過ごした。
朝から晩まで、何もせずにただ1人で過ごした。
食事はあった。
生活に必要最低限な事はしていた。
でも…。
毎晩、誰かの悲鳴が聞こえた。
それが辛かった。
「ごめんね」とずっと叫んでいるのだ。
声の主は、1週間に3回ぐらいはこの状態だ。
それも、悲鳴が聞こえるのはバラバラなので
いつ叫び出すのか分からないのが、怖かった。
ある日、ピタリとそれは止んだ。
組織の人が昼頃、私の所へ来た。
母親が死んだらしい。
声の主は母だった。
泣かなかった。どうでもいい訳じゃない。
私の心が壊れていた。悲しみが死んだのだ。
それから数日後、私はベルモンドの支配人と
実の兄の元へ行くことになった。
そして、今に至るのである。
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